「実は、華さんとお付き合いをさせていただいておりまして。華さんのお姉様がご結婚されたこの機会に一緒に暮らせたらと思い、そのお許しをいただきたいとお願いに参りました」

は……?

「え……?」

私に負けないくらい父と母もぽかんと口を開けている。

「もちろん、ただ一緒に暮らすというわけではありません。改めまして、正式に結婚のお許しをいただきにうかがうつもりです。まずは、二人で生活を共にすることをお許しいただけないでしょうか」
「えっ?」

け、結婚……?!

その想像だにしていないワードに仰天し、思わず声を上げてしまった。

「華? 結婚とか、そんな予定あったの? あなた、何にも言わないから……」

驚いた表情のまま、母が私に視線を送る。

知らない、知らない。そんな話聞いてない――!

咄嗟にただ激しく手と頭を横に振る。

「――自分の娘なのにこんなことを言うのはあれですが、特別何かに秀でているところがあるわけでもない、この歳まで、姉に頼りっきりで生きてきたようなぐうたらな娘です。それでも、いいんですか?」

突然父が、父親らしからぬことを言い出した。

「お見受けしたところ、あなたのような方なら、他にいくらでもいい人がいるんじゃないでしょうか。どうして、うちの娘を?」

それは、とても棘のある言い方だった。

「お父さん――」
「他なんてありません。僕にとって華さんが唯一無二の人なんです。華さんでなければだめなのです。誰がどう言おうと、僕には何よりも大切で愛おしいと思える人です」

その言葉を聞いた父が、みるみる表情を崩す。

「……私も、同じです。私にとってはかけがえのない娘だ。幸せになってもらわなくては困る」
「僕も華さんのお父様に負けないくらい、そう思っています。華さんは、何も秀でたところがないなんて、決してそんなことはありません。誰よりも真面目で真っ直ぐな心を持った、自分のことより相手のことを思い遣れるそんな女性です。それに――」

桐谷さん――。

「華さんは、僕を幸せにしてくれる、人生で初めての女性でした。そんな華さんを、僕は何に変えても幸せにしたい。どうか、華さんの人生を僕にお預けください」

'"僕を幸せにしてくれる、人生で初めての女性でした"

初めてって……。

その言葉に驚く。そして、否が応でも私の心を震わせる。