「パーシモンの人」

あ……
『……元気、だよ。俺も、……《あいつ》も』
『そっか。他の《猫ちゃん》も元気?』

そうか、元カノ。ピンときても良かったのに。
私、頭は良い方だ。だけど塔ヶ崎くんのこととなると、何でこんなにわからなくなるんだろう。
そうか、そうだったんだ。

《元》好きだった人。ノリで付き合ったって言ってた。
受け身って言ってたから、あの人から塔ヶ崎くんに告白したんだ。すごい、あんな綺麗な人に告白されるなんて……。

『単純なんだよ、俺。好きだって言われたら……動揺するし……気になってくる』

動揺して、気になっていったのかな。
パーシモンも見る度、あの人を思い出すのかな。
あの人の前、繋いだ手に力が入った。
何を思ったんだろう。今もまだ友達でいたかったと思うほど、好きだった人。
振られた側なら、引きずったのかな。

「まだ、好きだったりする?」
「……え、いや、今は全然」

今は……か。
「もしかして、引きずった?」

聞かなきゃいいのに。バカだな。
それに、聞かれたら嘘ついてくれたらいいのに、

「……うん」
正直に言ってくれる。バカだな。

「そっか」
「……今はもう、何とも思ってない」
「うん」

──
『じゃあ、聡子が誰かを見て、羨ましいって思うこともしよう。羨ましいってことは、そうしたいってことだもんな』

どうしよう、私、あの人が羨ましい。
じゃあ、そうしたいってこと?“そう”って……私……一体どうしたいんだろう。