「あっちい」
額にかかる髪をかき上げる。ふわりとその髪が元に戻る前に、青い髪が見えた。
……綺麗、だな。こんな時に見ても。

塔ヶ崎くんがこっちを見る気配がして、目が合う前に顔を逸らした。

「あ、りんご飴」
つやつや、赤くて綺麗だ。
「食べる?」
「うん」
「俺は暑いからかき氷にしよ」

今度は座る場所ながなく、歩きながら食べる。そうしても大丈夫なくらいには人が捌けた。
「ん」口に入れると、思ったより固い。パリッと飴にヒビが入る。……甘い。かき氷のいちごシロップの味……。

「かき氷の味がする」
「いちご味? こっちはマスカット。最近は色んな味があるよな。“マスカット味”の味がする」
「はは、何それ」
「フルーツのマスカットの味じゃなくて、飴とかの“マスカット味”の味!」
「そりゃそうでしょ。合成甘味料? 合成着色料……とか」

塔ヶ崎が手に持ってるかき氷は、綺麗な黄緑のシロップがかかっていた。
……さっきのあの人の浴衣みたいな、色。
私の手に持ってるりんご飴は、カラーと同じ色。
外の飴が甘過ぎて、中のりんごが味気ない。

「食べる?」
「んーん」
笑って首を横に振った。

「そ」

カラカラ、カラカラ。下駄の音が響く。家を出た時は、弾むように聞こえたのに。