「あ、うん……久しぶり」
そう言った塔ヶ崎くんの顔に少し違和感を感じた。

「そう……だね。元気?」
「うん」

明るくオレンジっぽく染められた髪は、所々銀色っぽくも見える。黄緑色の浴衣には紅色のカラーの花が咲いてる。個性的な色柄。彼女の髪とも、とても合っている。耳元では浴衣と同じ色の風鈴ピアスが涼しげに揺れていた。

「……彼女?」
その人の目が私の顔から繋いだ手へと移る。もう一度私の顔へと視線を移す。
目が会うと、感じ良く微笑んで、一礼してくれた。彼女の横には男の人がいて、その人も一礼してくれる。私も慌て一礼した。

塔ヶ崎くんの手に、無意識なのか力が入った。
視線が、後ろの男の人、それから彼女の耳元を掠めた。
「うん、そう」
「……そっか、えっと……」
「……元気、だよ。俺も、……あいつも」
「そっか。他の猫ちゃんも元気?」
「ああ」
「良かった。あ、ごめんね。お邪魔しちゃって。それじゃ……」
「うん、それじゃ」
最後にもう一度私の方を向いてにっこり笑ってくれた。感じのいい綺麗な……人。
塔ヶ崎くんの視線が二人の手元を見て、背中を追う。……あの二人は、この人ごみの中、手を繋いではいなかった。

「行こうか」
いつもの顔に戻って、そう言う。
……塔ヶ崎くん、さっき何を言おうとしたのだろう。