一人息子の父親も、一人娘の母親も祖父母の葬儀は簡易に済ませたとはいえ、大変だった。お互いにパートナーと娘(私)がいたことで幾分分割はされたが、全ての労力が一点に集中するのだ。手続きも、金銭的負担も。

将来、両親になにかあれば、私が……そう思うと、漠然としていない不安に襲われるようにもなった。

その点でもお医者さんっていいと思う。知識もあるし、顔も広い。金銭面で困ることもないだろう。

自分が結婚して子供を持つなんて想像は全く出来なかったので、それでいいと思っていた。
そこに行き着くまでの負担を親に課せてしまうけれど……。

──だから、私は──
初めから環境も整って、自由な塔ヶ崎くんに嫉妬混じりの憧れを抱いていたのだと思う。
認めてしまえば、胸のつっかえが落ちて、塔ヶ崎くんは全然嫌な男じゃなかった。

もう一つ、沢山の兄弟と若い両親、権威ある祖父母も持っていて……
羨ましいを通り越して、未知の世界だ。

一人で生きていくなんて不安は考えたこともないだろう。
静かなリビングは嫌いじゃない。一人の時間も。大きなお鍋に誰かの為の食事を多めに作る。それって、どんなのだろう。
ただ、だれかと過ごす夏休みっていいなあって思った。……親とは違う、誰か。