俺も佐鳥もこのペアに意味がないのも、陽太が松下と昂良にペアを組ませたかっただけだというのを理解していた。

ただ、『思い出』と言える何かは欲しかった。それは、俺も、それから……佐鳥もだ。
昨日言った『どのペアが一番』ってのは俺たちには関係ないし、勝ちに行く気もない。

何か面白いことしようぜ、と提案して解散して……たぶん日を改めて、どっか出かけるとか?そんなことになるかと思ってたら

目の前の佐鳥聡子が、眉間に深い深いシワを作ったまま動かなくなった。
……俺と出掛けても意味ないか。それなら今日限りで……


「私、塔ヶ崎くんの事、好きなのかもしれない!」

ものすごくびっくりしながら言われた。
俺もびっくりしたけど。

違うと思う。
ところが、感情をどんどんぶつけてくる佐鳥に……こっちもどんどん動揺してくる。
パーシモンの背中でも吸って落ち着こうにも……マジ?

ひとまず、時間が無くなって、翌日も会うことにした。
俺の17年の人生で一番驚いた出来事だと思う。驚きながら告白されたことなんて、ない。

「そうだ、聡子! 念のため言っておくけど……俺、今彼女いないから」

帰り際、全然時間が足りない。夏休みの初日で良かったと思う。

今度は付き合う前に、相手を知れたらいいなと思ってたはず。案の定、性に合わないと思う。
だって、あんな事言われたら気になるだろ?

……どうせ、俺は単純な男ですから。