「佐鳥、休み時間も勉強してんの? マジ?」
私の中の塾の問題集をサッと取り上げてそう言った塔ヶ崎くんの言葉尻に嘲笑が含まれてる気がして
「返して」すぐに取り返した。
「びっしり書いてんじゃん、すごいね」

ここで場を乱すほど馬鹿じゃない。嫌いなことは悟られないように
「塾の宿題、やり忘れただけだよ」って言うと
「ふーん」と、興味がないのか、はたまた
嘘だと見透かされたのか、その返事にカッと顔が赤く染まるのが自分でわかった。

塔ヶ崎くんのこういうところが本当に嫌い。陽葵と清夏の友達だから話しかけてくるんだろうなってところ。
それから
「あ、次現代文じゃん。だり、帰ろ」
と、躊躇いもなく早退けしたり、遅刻したり。

「高校は、卒業出来たらいいや」なんていつも気だるそうにしてる。

現代文の小林先生はボソボソとまどろっこしい説明を強弱なくひたすらに話す。
退屈で眠たい授業が6時間目にあるとなれば、帰りたいくらいだ。だけど、帰りたいからって、帰っていいものではない。成績に響くし……。先生の覚えも悪くなるし、だいたいサボるなんて、おかしいと思う。
我慢なんてしたことない態度に見ているだけでイライラしてしまう。

噂によると、大学生の彼女がいるとか、いないとか。