だけど、一度くらい『私らしくない』事をしてみたい。そうしなければ、目指す未来にたどり着けたとしても、こんな高校生だったことを後悔すると思うから。

「でも、何だろう……」
私がそう言うと

「じゃあ、聡子が誰かを見て、羨ましいって思うこともしよう。羨ましいってことは、そうしたいってことだもんな」
塔ヶ崎くんがそう言ってくれて

「うん、そうしたい」
この夏の課題が見えた気がした。

「今しか出来ないことね。17歳の夏」
「あ、ごめん。私まだ16歳」
「細かいこと、言うなよ……」
塔ヶ崎くんがおかしそうに笑った。でも

「何個でも、小さいことでも、何でもいいよ」と言ってくれた。塔ヶ崎くんが一緒にいてくれたら何でも出来る気がした。

「これも、ひとつ、私らしくないことなんだけどね。夏休みに友達、しかも男子の家にお邪魔するなんて」
「それなら俺も、一つの想い出、だよね」
「塔ヶ崎くんなら、女の子が家に来たことくらいあるでしょ」
「まあ、そうだけど。相手が変われば全然違うからなあ」

他の女の子が来たことあるのはわかっていたけど、チクンと胸が痛くなった。わかっているのに、塔ヶ崎くんの口から聞くと嫌だなって思うのが不思議で仕方がない。

「ほら、聡子、眉間の皺!」
と、そこをつつかれて、慌てて眉間を擦った。