「……ああ、そっか」
こんな話、困るかなあと思ったけど。

「ずっとフルで働いて、ほぼ貯金してるの。自分たちの老後と私の学費。医学部って高いでしょ? 入学金だけで桁違い。滑り止めの大学にもそれが必要だとしたらいったいいくらいるんだろう……。今だって塾の費用すごいと思う」

「確かにね、でも聡子なら医者になれそうだし、元取れるじゃない?」
「その元取った時に両親、元気でいてくれるかなあ」
「……今の70代なんてまだまだ元気だ。でも、絶対大丈夫だ、なんて安易なことは言えないな……」
「いっつも、どこかで一人で生きていく準備をしててね。あ、寂しいとかそんな感情じゃなくて、自立しなきゃって割りと前向きな感情」
「ああ、わかる気するな。聡子妙に落ち着いてるし、無理してる感じでもない」
「そう、別に無理してないの。両親の希望に自分もそうした方がいいなって同意してるし、将来その時が来たら絶対にそうして良かった~って思うんだろうなって確信もしてる」

だけど、何だろうな……その未来のために高校生の私が犠牲になってる気がしていた。
ずーっと真面目にやってきて、ふと……そう思う瞬間がある。
自由な塔ヶ崎くんにいいなあって思う瞬間が。
なら、わたしもそうしてみればいいのだろうけれど、そう出来ないのは羽目の外し方もしらなければ、本来そんなことを嫌う性格だというのも一因している。