「そっか、だからそんなに熱心に勉強してたんだ。志が高いってことか」
塔ヶ崎くんは、「いいんじゃない」っていつものように笑っていた。

私が《《なぜ》》医者になりたいか、は……他の医学部を目指す人と違っているかもしれない。

「私ね、一人っ子なの。しかも両親が40過ぎての子どもでね。父親も一人っ子で母親も一人っ子なの」
「ああ、そんなんだ。うちの母親いくつだっけ、40半ばくらいか?」
「でしょ、うちは両親ともアラ還」
「そっか、うちの親が今から生むのとあんま変わらないって考えたらそうなるのか」
「両親も一人っ子で従姉妹もいないし、祖父母はもう他界してる」
「……そっか」
「両親がね、私の将来をすっごい心配して、こんなご時世で結婚出来るかもわからないから、せめて手に職をって小さい頃から言われていて、お医者さんになりなさいって。どこ行っても生きていけるからって」
「……それで、医者になれって? ずっと勉強を《《させられてる》》のか?」

「両親を庇うわけじゃないんだけどね、私、勉強好きなの。楽しい。過度な期待を寄せられたわけでも強要されたわけでもなく、それなりに楽しく過ごしてきた。目標はずっと持ちながらね。何せ一人っ子なものだから、幼少期は両方の祖父母から溺愛されたし、父親も母親も愛情を注いでくれた」

塔ヶ崎くんは私の話に真剣に耳を傾けてくれた。