高校2年の夏休み前のことだった。

いるかいないかわからないくらいの地味な私は、成績が良いってことくらいしか取り柄がない。
それなのに、クラスで一番目立つグループに所属しているのは去年同じクラスだった細川清夏(きよか)が、他に面識のある子がいなかったせいで、仕方なく私に話しかけてきたからだ。
仕方ない感じを顔に出して話しかけてくるから、「声かけてくれてありがとう、細川さんでも、一人よりはマシ」と、言ってしまって……。これだから私は友達が少ないんだと後悔したというのに
清夏も「あ、佐鳥さんそんな感じ?」なんて気にすることもなく、いつの間にか清夏は私のこと「聡子(としこ)」って呼ぶようになった。

その後、クラスでも一際目立つ日野陽太に連れられてやってきたのが松下陽葵(ひまり)
日野くんが面識のある清夏に友達になってやってーみたいな事を言ったんだと思う。
清夏がいなければ、日野くんと話すこともなかっただろうし……松下陽葵は顔も可愛いし派手なタイプで絶対に話すことはなかっただろう。

2年生における高校生活は一気に華やかになってしまった。
日野陽太は暇さえあれば陽葵のところへ来ていたし、日野陽太と仲がいい誉田(ほんだ)昂良《たから》は学年一といってもいいくらいのモテ男。それに、自由人の塔ヶ崎(せん)は珍しい名字から間違いなく……《《あの家》》の息子だろう。1年生とか3年生とか、違う学年の女子も塔ヶ崎くんに会いに来たりしていて、交友関係が謎。