「誰に何言われたの?」
「……違うの、勝手に聞こえて来ただけ」

「……俺、もう髪青くないのにな……」
「え?」
「いや、こっちのこと」

私の伸びて来た前髪はそのまま耳にかけていた。俯くと、耳から落ちてしまうくらいの長さで、ちょうど私の地味な顔を隠してくれた。

繋いでた手を離すと塔ヶ崎くんがその髪を避ける。

頭にかき上げられた感触が残ったままで不思議に思って、そこに手をやった。
「あれ? 何これ?」
「髪、留めれるやつ。伸びて来たからさ。本当は俺がそれの代わりにずっと持っておきたいくらいだけど。それと俺以外触るの禁止!」

手に取ってみると、きれいな青いヘアクリップ。

「綺麗……」
「うん、俺っぽいだろ?」

塔ヶ崎くんはそう言うといたずらっ子みたいに笑った。

「あ、ありがとう」
「うん。俺、聡子の顔、すっげぇ、好き。他のやつは、どう思うか知らないけど」

だから、髪、上げといてって言った。

「……うん」

もう少し鼻が高かったらって思うけれど、
「ちっさい鼻、可愛い」って言ってくれるから、私はこの顔で良かったと思う。

二人でインカメラで撮った写真を見ると、ガーンってなるけれど、塔ヶ崎くんはいつもちょっと他の子といるときより顔がデレってしてるから、この顔でいいんだと思う。

わかるんだよね、ちゃんと見てるから。