──私に対して好意的な視線ばかりじゃないのは知ってた。
直接何か言ってくる人はいなかったけれど、私が気にしたら塔ヶ崎くんが気にしちゃうから、聞き流していたけれど……つい、清夏に言ってしまった。

「塔ヶ崎くんってやっぱり格好いいよね」
「うん、綺麗な顔してるよ」
「だから、派手と地味の王道とか言われるんだよね」

清夏の顔が強ばったから、清夏も私がそう言われてるの知ってたんだろう。知ってて、黙っていてくれたんだ。

でも、清夏もこんなこと言われても困るよね。もう少し鼻が高かったら、目がぱちっとした二重なら。

「おー、追い付いた」
塔ヶ崎くんの声がして、俯いた。

「ねえ、聡子の顔、可愛いよね?」
……サッと血の気が引く。塔ヶ崎くんが気にしちゃう。

「……ああ。何か言われた?」
心配そうな視線を寄越してくる。

「ちょ、清夏、言わないでよ」
恥ずかしい。なのに、塔ヶ崎くんは

「ありがと、細川! 聡子貰ってく」
って清夏にお礼を言った。

「うん! 後はよろしく!」
って言った清夏を置いて、塔ヶ崎くんは私の腕を取ってぐんぐん歩いて行く。誰もいない所まで来ると、腕を離して、向かい合って、手を繋ぐ。……両手だ。

恥ずかしくて、俯く。みんなから、地味だって言われる顔が恥ずかしくて……今さらなのに……恥ずかしくて俯く。