塾に行った時に見かけた先生は、私を見つけると片目をつぶって、親指を立てて見せた。

ふっ、おかしい。
私も両手の親指を立てて見せると、嬉しそうに笑って手を振った。

先生《《も》》うまくいったんだ、めぐ美さんと。そりゃあそうか。だって、二人で花火大会行くくらいなんだもんな。

花火は好きな人と……見たいもん。

──時々、美紘と舞花(ここでも!)と寄り道して帰る。

舞花はしつこくしつこく「撰くんとはうまくいってんの?」って聞いて来て、美紘が「諦めなって」と、苦笑いしてる。

「撰くんの顔、本当に好きなんだもん」
私はすっごい同意したけれど、
「……顔かよ」
と、美紘はまた苦笑いだ。

「あの顔はもう遺伝子絡まないと無理だわ。なかなかいない」
「……塔ヶ崎くん、兄弟多いけど」
「お兄さんいる!?」
「いるよ」

本気か冗談か舞花がガッツポーズした。
「ちょっとお」やっぱり美紘は苦笑い。

「……今度はね、私も、今度誰かを好きになったらまどろっこしいことなんてしないで、ちゃんと好きって言いたい。そう思う」
「うん」

舞花のこの言葉はちゃんと本気だってわかった。

「誰か紹介しようか?」
美紘も笑顔でそう言った。

「うん」

……友達と寄り道も、恋の話も、胸がくすぐったい。

「頑張れ」
「腹立つ!」
「あはは」

とても貴重な時間だって、今は思う。