髪をかき分けて、青い部分に触れる。
塔ヶ崎くんがくすぐったそうにそれを受け入れてくれる。
その手首を捕まれて、そこに自分の顔を置くように触れた。見上げてくれる瞳に囚われる。

視線を走らせる塔ヶ崎くんに
「誰もいないよ」
そう言って自分からキスをした。
塔ヶ崎くんの手が今度は私の頭にまわり、引き寄せられて、もう一度、唇が触れた。

「何か、案外聡子の方が腹据わってんね」
って言われてしまった。
教室でキスしちゃうなんて、少し前の私なら考えられなかった。

「だって」
「うん、したかったんだよね」
「そう」
「何でしたかったの?」

わざとらしく聞いてくる塔ヶ崎くんに、まどろっこしいことは飛ばして

「好きだから」って言った。
「うん、俺も」

塔ヶ崎くんが照れ臭そうに笑った。いつもとおりの教室が特別なものに見えて、この風景さえ覚えていたい。
夏休みは終わってしまったけれど……ずっと覚えていたいことばかり。

ホールからみんなが戻ってくるまで、塔ヶ崎くんの横に誰かの椅子を持ってきて座った。

チラリ、見るとチラリ見られていて、どちらからともなく、身を寄せた。
好きだから、触れていたい。聞かなくても、塔ヶ崎くんも、そうだよね?

誰かの戻って来た足音がするまでそうしていた。

今日の始業式はあっという間に終わったみたいで、校長先生の話し、短かすぎない?