──翌日
教室に着くと私は提出物をまとめた。
塔ヶ崎くんは横で欠伸をしてる。
「昨日、夜更かししちゃったの?」
「……何か、嬉しくて眠れなかった」

と、可愛い顔で言ったから、やっぱりその顔に釘付けになる。

「見るなよ」
って言われてしまって、とりあえず提出物を確認するのを続けた。

「……そんなビビらなくても大丈夫だって」
「だって、緊張するよ!」
「始業式だけだし大丈夫だって。後で出席はHRで取るだろ?」

結局、勇気がなくて、サボるのは始業式だけ。HRは出る。私には精一杯の私らしくないこと、だ。

塔ヶ崎くんが立ち上がって教室を出ていった。
「……塔ヶ崎くんてさ、何であんなに格好いいんだろう。すごくない?」つい、口に出してしまった。
みんなが驚いた顔してる。恥ずかしい!慌てて

「さ、行く前に私もトイレ済ましておこう」と最もらしく言って逃げた。
廊下には塔ヶ崎くんが待っていて、ちょいちょいと手招きする。

ガヤガヤと生徒たちがホールに移動するのを離れて見ていた。最後の流れがいなくなるのを見計らって教室に戻った。

「……誰もいない」
「はは、そりゃあそうだ」

夏休み前とは日の角度が変わって、窓から入る日が塔ヶ崎くんの席まで届く。

綺麗な、髪。私は、もうこの髪に触れることを許されていて、手を伸ばした。