「さて、朝ごはんにでも行きますか」
「わあ! 初めてのモーニング!」

「あ、俺もそうかも。いつも家で食うし」

塔ヶ崎くんも、初めて?嬉しい。
にやにやしてしまって、恥ずかしくて俯く。
俯く私の顔をわざと下から見てくる。

「もう!」
「はは!」

いつまでも抱いてたバスタオルを塔ヶ崎くんが四次元ポケッ……リュックに戻してくれた。
「もう、泣かないだろ?」って。

「海、綺麗だったね」
「うん、また来よう。……水着、買って」
「……」
「いや、入るなら水着いるだろ? え?」
「期待するほど、いいもの持ってないよ」
「いや、あのなあ」

繋いだ手を離して、塔ヶ崎くんが自分の服とリュックと私の背中を(はた)いてくれる。

「塔ヶ崎くんもぱんつ、見せて?」
「……は?」
「え、砂、入ってない?」
「大丈夫、大丈夫、大丈夫です」

最後にパンパンッと手を叩くともう一度手を繋いだ。

「行こ」
「うん。……あ!」

そ、そうだ。私……まだ『付き合いたい』って言ってなかった。

「……どうした?」
「あの、私と……付き合って下さい!」

わあ、塔ヶ崎くんの顔。
だって、タイミングとかわからないんだもの。初めてだから、わからないんだもの。

ぐいっと手を引かれて、ちょっと影になった階段の隅に座らされた。その隣に塔ヶ崎くんも座った。

階段にも砂があるし、また付いちゃうよって言おうと思った。