聡子を花火大会に誘った。

聡子の思うところの、『火遊び』

家族に花火大会に行くって言ったら、午前中には浴衣が出されてた。場所取りに行くから服の方が楽なんだけど、言い出せずに着ることにした。……桐箪笥と防虫剤の匂い。どうよ、これ。ついでに、聡子は浴衣なんて着てこないと思う。女子側だけ浴衣のカップルはよく見るけど、逆パターンは……見たことない。どうしよ。

せっかくばーちゃん出してくれたし、悪いなーって、思ったけど、断れば良かったか。
聡子との待ち合わせまでの時間、ぼーっとそう考えていた。

……万が一、聡子が浴衣なら……
そんな準備はしておいた。

聡子の姿が見えると、浴衣だ。
『「聡子、浴衣じゃん。めっちゃ可愛い!」』

結構、離れてるのに言ってしまった。横に来るまで待てよ、俺。

「か、格好いい!」聡子からもそう言われ、気分は上々。

聡子をそこに座らせて買い出しに行く。聡子の方を振り返って、盗み見る。

……浴衣、金魚のしか持ってないって言ってた。じゃあ……今日のために買ったんだよな?

白、めっちゃ綺麗だ。俺のも白系だしペアっぽくね?お揃い!?

……きも、俺。ちょっと冷静になろ。
屋台のムキムキのおっちゃんの腕を見て、気持ちを落ち着かせた。