「眉間のシワ!! まーた、何か考えてんな? 俺に聞いてよ、何?」
「塔ヶ崎くん前の彼女とは価値観で別れたの? かなって……」

塔ヶ崎くんは少し躊躇するように視線を泳がせると
「……そうだな。生活リズムもある。向こうは結構時間があって、こっちは授業びっしりあるだろ? 大学生からみたら高校生は子どもに見えるだろうしな。金もなけりゃ、車もない」
「確かに、先生すっごい大人に見えるもんな。向こうからしたら子どもって感じだし」

生活リズム……か。
……あ、でも……塔ヶ崎くんが学校サボるのって……もしかして彼女との時間作ってたのかも……。

パッと顔を見ると、ふっと笑った。憂いのあるような、少し悲しい笑顔。
何を思ってるんだろう。


「と……」
塔ヶ崎くん、誰の事を思ってるの?
そう訊こうとした。
階段を下りる音がして振り返る。
「私、学校行くね、聡子ちゃんごゆっくり」
お姉さんはメークもして、Tシャツにデニムというシンプルな服装だったけど、とても綺麗だった。すっぴんも綺麗だったけど。

「あ、はい。ありがとうございます」

大学生って……すごく大人に見える。

「何か言いかけた?」
「ううん、大丈夫」

「そ。じゃあ、俺は聡子におにぎりでも作るかね」
塔ヶ崎くんが立ち上がってキッチンへと向かう。
どこかからパーシモンが現れて、彼の後をついていく。

「パーシ、お前のご飯じゃないぞ?」
優しい声が聞こえた。