──翌日
家で勉強せずに、塾へと向かった。《《いつも通り》》のダサい格好で。

自習室の前に、談話室へ向かった。
やっぱり。そこにいる気がした。

「今日はダサいね。撰くんとは会わないんだ」
「うん」
「……」
「……」
沈黙が続いた。けど、向こうが先に口を開いた。
「撰くん、私のこと、何か言ってた?」
「……質問ばっかりよね、いつも。気になるのは塔ヶ崎くんのことだけ、だもんね」

つい、ここに来た理由も忘れて言ってしまう。でも、この日は相手もしおらしかった。たぶん、私と同じ理由でここに来たと思う。
いつもの二人が一緒じゃないから。

「……私、筒井舞花。ごめん」
「……うん、私も、ごめん」
「何で撰くんが佐鳥さんみたいな地味ガリ勉と一緒にいるのか、納得いかなくて、それを佐鳥さんにぶつけた」
「うん、それは納得いかないだろうと、私も思う」
正直に言うと、筒井さんはふっと笑った。

「でもさ、私、撰くんのそんなので判断しないところが好きなんだよね。それ思い出したら納得しちゃった」
「筒井さん《《ちゃんと》》塔ヶ崎くんのこと好きだったんだ。お金目当てかと思ってた」
「ちょっ! そんなんじゃないし! どっちかと言うと顔だし!」
「……顔」
「あ。もういいや。好みなの!めっちゃくちゃ!」
「あの顔、好みじゃない人なんていないよ」
「佐鳥さん、自分そんななのに厚かましい!」
「自分だって!」

ぎゃあぎゃあ言い合って、全然謝られた感じがしない。