「晩ごはん食べてこ。いい?」
「あ、うん。お母さんに連絡する」
「うん」

商業ビルに入ると、私が母親に連絡する間、離れて待ってくれていた。母親からは『もっと早く連絡してよ』と言われたけれど、友達と約束のある私に少し嬉しそうだった。笑ってるんだろうなって想像出来る声だった。

塔ヶ崎くんの待つ場所へ向かうと、足が止まる。
塔ヶ崎くんのまわりに、あの子たち……だ。塾の帰りにこのビルに寄ったんだ。
私に気づくと、上から下まで見て、ふんっと笑った。

「今日、全然違うね。あは、塔ヶ崎くんと会うから張り切ったんだ、かっわいー」明らかに嘲笑する言い方に、ムッとする。普段はダサいくせにって事。でも言い返せない。あの子たちはそう言えるほど、いつも可愛いから。

「え、マジ? 聡子、今日俺と会うのに張り切ってくれたんだ。めっちゃ嬉しいんだけど。そういうの……アガる。今週全然会えなかったんだ。久しぶりのデートなんだけど、女子が好きそうな店、知らない? 」
と、その子たちに聞いた。
「……え……」
「あ、聡子に聞いたらいっか。何食べたい?」
そう言うと、私の手を取って、近くでじっと見つめてくる。……これ……

「……えっと……何、かな」
「歩きながら決めよっか。時間、全然足りないし。あ、じゃあお前らも気をつけて帰れ、な」

と、ポカンとした顔を残してスタスタ歩き出した。