俺達は、ある夏の夜、肝試しを実行するため、あの小学校裏に集まった。そう、あの事件の夜だ。

その夜は雲ひとつなく、月がとても明るかった。どうせ肝試しするなら懐中電灯なしで行こうとジロが言い出したんで、俺は持ってきた懐中電灯を、あの民家の近くに置いていった。

4人は、月明かりだけを頼りに、恐る恐る辺りを探し始めた。民家を過ぎて、獣道をしばらく進むと古い物置小屋があった。

「おい、あの小屋、いかにもって感じしないか?きっとあそこに住んでるんだ、あいつ」

そう言って4人はゆっくり近づいてみた、すると小屋の近くに誰かがいんだ。それが林のおやじさんだった。

「おい、お前たち、なにしてるんだ?明かりも持たずに。肝試し?そんなもん何がおもしろいんだ」

「あれ?林のおじさんじゃないですか!そこに何があるの?怖いもの?」ルリがおどけて聞いた。

「あれ?ルリちゃん、君か」ふたりは知り合いだった。

「この村で旅館をやってたおやじに頼まれて、小屋の修理をしてたんだ。何が置いてあるかまでは知らないなぁ」

「この村に旅館なんてあったんだ。あ!もしかして、財宝でも隠してたりして」俺は何気なく言った。

扉のかんぬきを外して、中を覗いたが、何も置いてなかった。ただ、地面にぽっかり開いた穴が見えた。

「荷物は何もなくて、穴がひとつ?ますます宝物って感じじゃないか?これ」ジロは興味津々だった。

それを見たおじさんが、「なんだ、長い間、わしは何もない小屋を修理させられてたってわけか。こうなったらちゃんと確かめんと、気が済まんな」そう言ってその穴を調べた。

穴の深さは、丁度俺たちの背丈ぐらいで、中は空洞になっているらしかった。おじさんと、ジロと俺が入ってみた。たたみ一畳ぐらいの広さがある。空洞の奥は、少し土が盛られ、台にようになっていた。その上に何か置いてある。

「おじさん、何かあるよ、照らしてみて」

「うわ、なんだ、これ?」

それは、実物大ぐらいの女の頭の彫刻だった。何年もかけて彫ったんだろう、丹念に作りこまれていた。ただ、目玉のところだけ、繰り抜かれて、とても気味が悪い。