俺があの少年をはじめて見たのは、25年前、小学生のときだった。

同じクラスの仲間、ゼン、ジロ、女の子のルリ、そして俺の4人でよく遊んでいた。授業が終わると学校裏によく集まって、木の実拾いや昆虫探しに夢中だった。

そんな時、木の幹の影にいる、妙なかっこうの男の子を見つけた。体中に草木を貼り付けた、ひどく痩せた男の子だったよ。

「お前どこの子だ?」ゼンが声をかけたが反応しない。

「蓑虫みたいなかっこうしやがって」ジロにも反応がない。

「あなた好きな食べ物は?」ルリが聞いた。すると初めて返事をした。

「目玉」

「目玉だって、お前、それを言うなら目玉焼きだろ?」俺はそう言って笑った。

しかし、無視して、ルリのほうを向いてこう続けた。

「お前の目玉はきれいか?」

かっ、と目をむいた少年は、突然、蓑の隙間から、折れそうに細い腕を突き出した。手には彫刻刀が見えた。

そして急に、歯をむき出しにして、狂ったように木の幹を彫刻刀で削り始めたんだ。「目玉をよこせ、目玉をよこせ」って繰り返しながら。

俺たちは、怖くなってその場を逃げ出した。まだ幼くて思い出すだけで怖かった俺たちは、この蓑虫少年のことを、4人だけの秘密にしたんだ。

中学に入っても4人はいつも一緒だった。ある日、学校内でその時流行っていた肝試しを、自分たちもやろうってことになって、ゼンが、蓑虫少年を探しに行こうと言い出したんだ。

みんな面白がって賛成したんだが、これが人生最大の過ちだ、世にも恐ろしいあの怨霊に会いに行こうっていうんだから。