夕食は、大広間にて両家一緒にとっている。

といっても、火宮家当主と、その妻と、陽橘と、私の父親と、母親と、咲耶が同じテーブル。

少し離れたところで私と桜陰が同じテーブルである。

この辺の扱いはお互い変わらないらしい。

君たち実は親戚だろうと言いたいくらい、そっくりではないかね。

初めは毒入りを警戒したが、これには入っていないと先輩が教えてくれた。


客人には出さないよ、とのこと。

咲耶お披露目の日の私は、客人ではなかったのか。

とまあ、過ぎた事は置いておく。

話を戻して、彼らと同じテーブルでなくてよかった。

しかも、気心の知れた先輩と一緒なのだ。

寂しくないし、平和である。

自然と笑顔になっていると、正面の桜陰先輩に微笑み返された。

先輩も同じ意見のようだ。



「親睦を深めるために、近くの山にキャンプに行かないか?」



「よいですな。長い付き合いになるのです。早いうちに交流の場をいただけて光栄です」



火宮家当主の提案に、父親が良い返事を返す。

それから、日程について話し合っていた。

妹と弟君は当然のことながら、母親同士も親しげに話している。

これは、あの人たちがキャンプに行っている間、稽古場使い放題かな。



「桜陰、お前も来なさい」



火宮家当主が桜陰先輩を見ずに言う。



「はい」



先輩は無感情に返事をした。

散々ないもののように扱っておきながらこれか。

都合のいいように使われて、先輩、ご愁傷様です。


心の中で合掌していると、私の父親も真似したのか、こちらを見ずに言う。



「月海も参加するんだ。火宮さんのご好意、お断りするわけにはいかないだろう」



「………はい」



私もかい。


先輩はニヤニヤして私を見ていた。


ザマァみろ、お前も道連れだ。


と言っているなこれは。

この野郎ぶん殴りたい。


とりあえず脳内でボコボコにしておく。

かなしいかな、現実では返り討ちだ。


まだ痛みの残る横っ腹を撫でる。

服で隠れるところはあざだらけ。

それをおとなしく隠す私。


………あれ?
実は特訓とは名ばかりのDV受けてます?

なぜ私はやられてばかりで黙っているのだろう。

いじめられているって、声を大にして言えば助かるのでしょうか。

いや、助けてくれる人なんていないな。



『わたくしは、月海さんの味方です』



ふいに、イカネさんに語りかけられた。

彼女の声を聞いて思い出す。


なぜ火宮桜陰にボコボコにされているのか。

イカネさんと一緒にいて、恥ずかしくない私になる為だ。


やられることに慣れすぎて、目標を見失っていた。

何度同じ思考に陥れば気が済むのか、学習しないなぁほんと。

悪い方に考えるのは、私の悪い癖である。


スサノオノミコトの力も使いこなせていないのだ。

まだまだ訓練しなければ。


次こそは一撃入れてやるわ。

奴の体に、私と同じだけのアザを作ってやる。