ここはやっぱり、ふたりで分けられるピザとかポテトかな。個人的にはパフェやケーキも捨てがたい。
「んー、イカネさんは食べたいものある?」
「わたくし、月海さんのおすすめが食べたいですわ」
なにこのかわいい子。
「初めて来るからおすすめってのはないけど………、これはどうかな? 期間限定大盛りパフェ」
ケーキ、アイス、ポテトまで乗った、推奨2〜3人の一品。
「いいですね、一緒につつきましょう」
スプーンも追加で注文して、運ばれてきたものをふたりで食べる。
甘くて美味しいですね、と、お気に召したようだ。
そういえば、パフェを食べているイカネさんは他の人の目にはどう映っているのだろうか。
スプーンが浮いて、生クリームが消えていく、とか?
「どうかしましたか?」
じっと見ていたから怪しまれたかな。
「えっ……と、ほっぺたに生クリームがついてるよ」
「いやですわ、あまりに美味しいものだからつい……うふふ」
そしてイカネさんはパフェを食べる速度を落とした。
頬を気にする様子もないから、きっと嘘だと気づいているな。
わざと誤魔化されてくれたんだ。
そして私が、遠回しに食べすぎと言っていると思われたのだろうか。
そんな心優しき友人を見ていると、罪悪感に苦しくなる。
「ごめんなさい嘘です。イカネさんの食べるところは他の人にどう見えてるか気になりました」
「うふふ、気にすることはありませんよ」
彼女が言うならそうなのだろう。
現に今、怪奇現象だと騒ぎたてる者はいない。
そして、主にイカネさんによってパフェは平らげられた。
「美味しかったです、ごちそうさまでした月海さん。ほとんど私が食べてしまって、よかったんでしょうか」
「お腹いっぱいになったから、むしろ食べてくれてありがとう。そしてごちそうさま」
拝むように手を合わせる。
幸せそうに食べる美人は目の保養でした。
幸せでいっぱいです。
「さて、次はどこに行こうか?」
「………月海さん、失礼ですが、もう家にお帰りになった方がよいかと」
「まだ大丈夫だよ。家には連絡するし」
「いいえ、そういうわけでは………」
せっかく友達になれたのに、ここでお別れなんてもったいないというか。
やっと憧れの、友達と放課後遊びに行くということができたのに、この幸せをまだ終わらせたくないな。
でも、イカネさんの都合もあるだろうし……。
欲と理性の葛藤で唸っていると、イカネさんが顔を険しくさせる。
「……間に合いませんでしたか」
その時、ドサリ、と店内にいた全員が同時に倒れた。
学生も、店員さんもだ。
「え、なに!?」
「どうやら始まったようです」


