学校からほど近いファミレスは、学生御用達。
この時間、客のほとんどが私の通う学校の生徒だ。
ふっふっふ、ついに来てしまったよ。
そう、今の私は独りじゃないのだ。
イカネさんという先程できたばかりの友達と一緒なのだ。
堂々とファミレスに入ると、店員さんに声をかけられた。
「いらっしゃいませ、一名様でしょうか」
店内の視線が私に集まっている。
あの人ファミレスに一人で来てるよ、と馬鹿にされているようだ。
「えっ、ふたりですけど……?」
「月海さん、わたくしの姿は他の人には見えないんです」
隣のイカネさんが申し訳なさそうに言う。
「お連れ様はいつ頃いらっしゃいますか」
「………………すみません、一人でいいです………」
店員にも、馬鹿にされた目を向けられた。
ちくしょー。
「申し訳ございません、わたくしが言ってなかったばっかりに月海さんに恥ずかしい思いを……」
「イカネさんは悪くないよ」
だから、恥ずかしいとか言わないでくれるかな。
こちとら、必死に気にしないようにしてるんだ。
「あちらのお席にどうぞ」
店員さんに案内されるままに席に着く。
向かいにイカネさんが座った。
…………見えないのに、座れるんだ。
そういえば、手を握ったわ。
イカネさんの手の柔らかさと滑らかさを思い出してニヤけていると、正面の彼女が首を傾げた。
いけない、本人の目の前で妄想よくない。
「さーて、何食べる?」
周りに配慮して小声になる。
中央に置いたタッチパネルを叩いて、順番にメニューを見ていく。