「俺の質問に答えろ。この式神はどこで手に入れた」
なんでそんな事聞くんだろう。
別に隠してるわけじゃないし、答えることで解放してくれるなら話してもいい。
「………先輩が広めたっていう、おまじないをしただけですよ」
「はあ?」
「あれ?」
訳がわからないという顔をされた。
通じないのでしょうか。
「あの、紙に星書くあれですよ」
「冗談言ってんじゃねぇぞ。あれは俺でも成功しなかったんだ」
知りませんって。
「でも、実際出てきましたし」
「だから、くだらない嘘は…」
「本当ですよ」
私と火宮先輩の言い合いに、イカネさんが入る。
「わたくしは、この方に召喚されたのです。この方はどこの家の所属でもありません」
「………チッ」
勢いを削がれたのか、火宮先輩は私を解放してくれた。
腰が抜けて、壁伝いにしゃがみ込む。
「高位の神は嘘をつかない。彼女が言うならそうなんだろう」
諦めてくれたのでしょうか。
見上げると、ニヤリとした笑顔の彼がそこにいた。
「お前、俺の下僕になれ」
「はあ!?」
「間違えた、従者になれ」
「変わってないよね!」
「俺の隣を歩く権利をやる」
「つまり間違えてないんだね!」
何度言い直しても変わってないし、そんなありがたくない権利いらないし。
驚きのあまり思ったことが口から出てしまったよ。
「無所属なら好都合。誰かに取られる前に俺がもらう」
「そういうの結構ですから」
「そうか、嬉しいか。当然だな」
「いいえ、いりません、嬉しくありません」
「いま、結構って言っただろ」
どこかの悪徳業者みたいな言葉の取り方をされたと気づいても遅い。
言い直しも受け付けてもらえず、彼の手には私のスマホ。
いつのまにスったよ。
「ほらよ。俺が呼んだらすぐに来い」
「ええー………」
投げ渡された私のスマホには、火宮桜陰の連絡先が追加されていた。
悲しい事に、家族以外で初めての登録者だ。
「用は済んだ。帰っていいぞ」
それだけ言って、火宮先輩は去っていく。
「月海さん、申し訳ございません。わたくしが至らなかったばっかりに」
「ううん、イカネさんは悪くないよ。すべてはあの理不尽俺様大魔王が悪い」
「………ふふっ」
「これ、どうやって着信拒否とかするんだろう……」
スマホを睨みながら、ああでもないこうでもないと唸っていたが、やめた。
あんな奴のために頭を使うのもばからしい。
無視しよ無視。
それから私たちは、気持ちを切り替えて楽しい話しをしながら帰路についた。