「迎えにきたよ」
「………なんで」
「また放課後って約束したよね」
「それは………」
イカネさんに言ったのであって、火宮先輩に向けて言ったわけではない。
わかっていて利用しやがりましたね。
「あの人、昼休みも先輩を連れて行った…」
「放課後も火宮先輩と一緒にいるってずるくない?」
「見せつけてるの? 性格悪っ!」
また、周りの目が痛い。
てか、私が連れて行ったわけではない。
先輩が勝手に来てるだけなのです。
私は被害者だ、と、声を大にして言いたいが、それができないのが小心者たる所以である。
「じゃあ、一緒に帰ろうか」
お断りします、と言えないのが小心者たる以下略。
私は急いで荷物をスクールバッグに突っ込み、小走りで教室を出た。
「あはは、待ってよ」
歓声か悲鳴かを起こしながら奴が迫る。
完全に捕食者のアレじゃないですか。
命の危機を感じて、途中から全力疾走になる。
校門を出てすぐ、イカネさんを喚んだ。
「どうしよう話聞いてくれないアレ何!?」
「落ち着いてください」
「とりあえずどこかに逃げて……」
「残念。追いかけっこはここまでだ」
すぐ後ろから声が聞こえた瞬間、手首を掴まれ、脇道へ引き摺り込まれた。
気付けば、両手首を頭の上に押さえつけられ、お綺麗な顔が迫る。
手際いいなぁ。
手慣れてやがる。
イケメンはこういうことよくやっているのかもしれない。
「お前、俺を前にしてよくも逃げてくれたな」
「………」
チンピラよろしく凄まれる。
昼休みにも思ったけど、学校では爽やかイケメンなくせに、素敵にねこかぶってやがりますのね。
「まただんまりか?」
「いやいやいやいや」
あの状況なら誰でも逃げるでしょ。
チキンなボッチの小心者をお舐めでないわよ。
「何度も言わせないで、その人を離しなさい」
「今俺に手を出すとこいつにも当たるけどいいのか?」
私に密着してるのは、イカネさんの攻撃を封じる為。
「くっ………」
イカネさんは右手に纏わせた雷を消す。
人質に使われてる私、すごく足手まといじゃないですか。
両手は壁に押さえつけられて動かせないし、両脚の間に膝を入れられて動かせないし、とにかく自力じゃ抜け出せない。


