【完】シンアイ



結衣ちゃんの顔も、俺の顔も見られたくなくて、後ろから抱き着く体勢を維持しながら、灰皿に煙草を置く

中学1年生で無邪気に笑って、俺の名前を呼ぶ妹の顔を今でも覚えている

学校から帰る途中、消防車がけたたましい音を上げて走って行くのを見て、煙が上がる場所が自分の家の方向だったことに嫌な胸騒ぎがして、差していた傘を放り投げて家まで走った

角を曲がってまっすぐ走れば、家があったはずなのに、そこには業火に包まれた煙をあげる自宅の形をした炎しかなくて、家の中から悲鳴に似た妹の叫び声が聞こえた

「助けて!」そうなんども叫ぶ妹を助けにすら行けなくて、周囲の大人に止められ、ただがむしゃらに抵抗することしかできなかった

「妹さんみたいに、私も居なくなると思った?」