午前4:00の空はこれから訪れる朝を待ち、その暗闇はとても優しくあたしを包んでいる。

風俗街の真ん中のラブホテル。天井からぶら下がった大きなシャンデリアは、消え失せたネオンの代わりにキラキラと眩く、そして心からの安堵を誘う。

自分好みのセックスをして果て、眠りについた男の裸体はクイーンサイズのベッドの上に転がり、鏡張りの部屋の壁にだらしなく映っている。

まだじわりと湿度と熱を持ち、汗ばむふたりの裸体は、「恋人」というネーミングさえも持てない関係だった。

あたしは、この男の刺青だらけの身体が好きだ。
ただ、それだけでこの男の身体だけを求める理由になっている。

あたしは擦り傷だらけの革のソファーで煙草に火を灯し深く吸い込んで、唾液でグロスが剥がれ落ちてぐちゃぐちゃになった唇から荒い煙を吐き捨てる。そしてバッグの中からルイヴィトンの財布を取り出して、テーブルの上に諭吉を3枚、そっと置いた。

その諭吉も、この夜を、この男を買うための紙切れ。

煙草を雑に揉み消し、ベッドの上で規則的に静かな呼吸を繰り返している男の首元に噛みつくように舌を這わせていく。大きな上り龍の刺青の口から覗く鋭い牙の部分を舐めあげたら、あたしとこの男の身体がまた熱を放出させていくのがわかった。

あたしは目を伏せて、男の性欲を甦らせ、濡れた身体の中へと導く。演技のように大袈裟な喘ぎ声は、助けを求めるかのような叫びにも似ていて、心が少し痛んだ。

「愛してるよ。」

シャネルのエゴイストプラチナムの香りを放った男の耳元に囁くと、男はまるで10代のカップルのセックスのように、感情のまま狂い出したように強く腰を振った。

愛はお金で買えるもの。

ねえ。
あたしは、今、とても泣きたい気持ちだよ。