春色の屍 【完】

「一度食べたら、リピーターになる人はきっといると思うんですけどね」

「ぼくもそう思います。みんな頼めばいいのに」

「ハンバーグ専門店に来る人の(くち)は、もうジューシーな肉汁をスタンバイしてるんでしょうね」

「はは、それもそうだ。あなたはここのカレーを食べたきっかけって、なにかあるんですか?」

「きっかけ、は……」


(たかむら)先輩だった。


きっかけも、原動力も、すべては篁先輩だった。
高校生だった私の、ひりついた痛み。





――あそこにある、ぎらぎらした絵って、誰が描いたんですかっ。



友達の委員会活動が終わるのを待っているあいだ、ひやかしで美術室を覗いだ私は、胸を強く揺さぶられた。

美術だとか芸術だとかに興味はなく、美術の成績は小学校からずっと3だった。
そんな私がなぜか一枚の絵を見た瞬間から惹かれてしまった。

鈍器でがつんと殴られ、そのうえ稲妻が直撃するような、そんな激しい衝撃だった。

その絵が上手いのか下手なのか、なんてことはわからない。
ただただ、その目まぐるしいタッチに、叫喚するような激しい色使いに魅せられた。