春色の屍 【完】

テーブルの上の先輩の手にそっと触れ、私はもう一度言った。

「明日で終わっちゃうから。だから、後悔しないようにした方がいいですよ。
行ってください、先輩」

大丈夫です。カレーは私が二人分食べますから、と笑うと、先輩は苦しそうにぎゅっと眉を寄せてから、ほどけるように微笑んだ。


ごめん。ありがとう。


去り際、先輩は私の頭をぽん、と軽く撫でた。
今度こそ私は泣いた。

先輩が振り向きませんように。
泣いているところを見られませんように。

そんなことを願ったけれど、願いは無用だった。
先輩は一度も振り返らずに店を出た。

「お待たせいたしました」

店員が持ってきた二人分のカレー。
私はいつもより大きな口で二人分のカレーを食べた。



それにしても不思議だ。
私はなぜか、またここのカレーを食べたくなってしまった。
ひりついた胸に沁みた、辛口カレー。

ふふっと笑うと、アオヤギさんが不思議そうに私を見た。