春色の屍 【完】

「桐野さ、緊張してるからってタメのシャチに敬語つかうことないじゃん。
シャチ、桐野のこれは緊張してるだけだから。ツンデレ属性なんだよな、桐野は」

「ちょっと!」

桐野さんの頬が内側からじゅわっと赤く染まり、さっきまでツンとしていた顔が動揺を滲ませた。
それに、なぜか先輩にたいしては軽い口調だった。


これって、まさか。


「俺と桐野、じつは遠い親戚なんだ。こいつから学校では隠すように言われてるから、名字で呼んでるけど」

先輩はひっそり告げた。

じつはつき合ってるんだ、と言われるのかと思った。
騒いでいた胸が凪いでいく。

「よし、今日は三人で飯食いに行こう。シャチの入部記念」

先輩がそう言うと、桐野さんは「言い出した人に会計は任せるから」と言って、またツンとした顔で席についた。