「はいりなよ、美術部」
「えっ」
びっくりしただけなのに、先輩はまた口を開けて笑った。
拳が丸っと入りそうなくらい大きな口。
自信の大きさと笑う口の大きさは、比例しているのかもしれない。
「もう、どこか部活はいってる?」
「いえ……」
「なら、いいじゃん」
「でも……。美術のこと、わかりません。いつも、ずっと、3です」
かたかた震える声。
先輩は不思議そうな顔をして首を左右に曲げ、ぱきぱきと骨を鳴らした。
そうしてから「ああ、3って美術の成績か」と言い、わはっ! と声に出して笑った。
近い。けれど不快ではない、絶妙な距離感。
まったく物怖じなどしていない。
私が後輩だからではなく、先輩は誰にたいしてもそうだった。
生徒から嫌われるような気難しい教師とだって、先輩は楽しそうに話す。
教師の方もまんざらでもないようで、縦に刻まれた眉間の皺は、先輩の前では姿を消していた。
私だけではなく、誰もが先輩に惹かれていた。
「えっ」
びっくりしただけなのに、先輩はまた口を開けて笑った。
拳が丸っと入りそうなくらい大きな口。
自信の大きさと笑う口の大きさは、比例しているのかもしれない。
「もう、どこか部活はいってる?」
「いえ……」
「なら、いいじゃん」
「でも……。美術のこと、わかりません。いつも、ずっと、3です」
かたかた震える声。
先輩は不思議そうな顔をして首を左右に曲げ、ぱきぱきと骨を鳴らした。
そうしてから「ああ、3って美術の成績か」と言い、わはっ! と声に出して笑った。
近い。けれど不快ではない、絶妙な距離感。
まったく物怖じなどしていない。
私が後輩だからではなく、先輩は誰にたいしてもそうだった。
生徒から嫌われるような気難しい教師とだって、先輩は楽しそうに話す。
教師の方もまんざらでもないようで、縦に刻まれた眉間の皺は、先輩の前では姿を消していた。
私だけではなく、誰もが先輩に惹かれていた。


