その5
夏美
ケイコとテツヤ君が下りてきた…
「皆さん、お待たせしました。テツヤと私、今日を以って今までの付合いを解消しました。それで、今日からは違う付合い方でやっていくことにします…」
「…」
私と南部さんは顔を見合わせた
お互い瞬きが止まっていたわ
ケイコのお母さんは…
なんだか頭を横にゆっくり傾けてるしぐさだけど…
とにかくもう少し説明を聞かなくちゃ、わかんないよ
...
約10分かけて、ケイコとテツヤ君から二人の”結論”を聞いた
二人の話し合いの要旨はわかった
でも…
「ケイコ…、あなた、彼女軍団とかって人達にあんな仕打ちされて、憎いとか悔しいとかって気持ちはないの?…」
「最初はありました。確かに、そういうの…。でも、よく考えたら納得いきました。だから、今は”彼女”たち10人に対しては、そういう気持ちはありません」
ケイコはきっぱり言い切ったわ
「…むしろ、すまなかったと。なので、全員には無理ですが、何人かには直接会って話してこようと思ってます。私の無神経な振る舞いは詫びるつもりですし。でも、他の理由で私に腹を立ててた人たちは認めるわけにはいきません。断じて。彼女たちには、”それ”も同時に、しっかりと告げてきます」
この子…、どうやら”今回”の背景を察してるようだ
...
私たち南玉内部が、この件で過剰な反応を起こしかねないことを彼女なりに案じてるわ
ケイコのことだ
きっと自分のせいで、南玉内外で揉め事が起こることを懸念してるんだろう
クソッ、また”奴ら”のことが頭に浮かんでカッカしてきたわ
とにかく、今はケイコとテツヤ君のことだけを考えよう…
...
「そう…。私は、今までの二人のスタンス崩す必要はないと思うけど…。正直言って、このままで貫いて欲しい。でも、あなた達が納得して決めたこと、それは立派よ。なかなか決断できるもんじゃない。私は二人の気持ちを尊重するわ。ケイコ、お母さんにもきちっと伺うのよ」
「はい。…あのう、お母さん、そういうことで決めたんだ。私たち…。了解してもらえるかな…」
ケイコのお母さんはやや怪訝そうな表情だったが、少しして穏やかな顔に変ったわ
そして畳に正座している膝の上の両手を合わせたまま、ケイコに向かって語りかけた
「二人が決めたんなら、それでいいわ。テツヤ君、こんなガンコな子だけど、これからもケイコのことよろしくお願いね。そちらのお母さんにも、しっかりとお話しするのよ」
「はい、おばさん。いろいろ心配してもらってすいませんでした」
「南部さん、あなたはどうですか?」
「ああ、オレも二人の決めたことを尊重する。ケイコちゃん、テツヤの為につらい思いをさせてすまなかったね。ぜひ、コイツの面倒、可能な範囲で構わないから頼むよ、今後とも」
「はい。こちらこそ、ご心配おかけしました」
ケイコがそう言った後、テツヤ君は頭をかいて照れ笑いしてる
そんな彼の姿に気持ちがほぐされたのか、自然にみんなクスクス笑いだしてね…
やっとその場の空気が和んだって感じだわ
...
私は二人の今までを棚上げにするこの決断には、決して納得はしていなかった
ケイコとテツヤ君は別に今のままでいい
周りがどうであれ、強引に突っ張ってもらいたかった
これが、私の偽わざる本心だ
だって、あんなにお互いを理解し合ってるんだよ!
そんなベストカップルが、なんでこんなことで離れなきゃならないのよ!
割り切っちゃえばそれで終わりだよ、”彼女”連中のことなんて
当事者ではない私からは、そう思えてならない
悔しい気持ちもあった
一人の人をいろんな葛藤の下、愛し続けてる自分にとっては、どこか我がことと混同しているようだ
その自覚はあるんだけどね…
何もそこまでバカ正直になることないんじゃなかって‥
損だよ、そんな生き方…
...
南部さんと私はケイコの家を出た後、テツヤ君と別れてファミレスで夕食を一緒にとった
「夏美、いやあ、ありがとう。助かったよ、今回は。今日は俺のおごりだ。好きなもん、腹いっぱい食ってくれ」
「まあ…。じゃあ、お言葉に甘えて、遠慮なく‥」
では、何をいただこうかしら…
メニュ-と睨めっこの私は、空腹を目いっぱい挑発してくる目の前のご馳走さんたちにクギ付けなんだけど…
...
私の頭の半分は”違う”ことでも、目いっぱい占領されていた
とにかく、ケイコとテツヤ君の去就はこれで一段落だ
二人が決めた道だし‥
それに従っていけばいい
このあとは、あの二人に任せればいいんだ、要は…
さあ、そうなれば、次よ!
私たちは、やってやんなきゃいけない
奴らに対しては…!
ううん…、こうとなってはその渦の中にはケイコもいる
本郷麻衣はケイコを”ど真ん中”へと引きずり込んだのよ
そして、ケイコ自身、決してそこから逃げることはないだろう…
夏美
ケイコとテツヤ君が下りてきた…
「皆さん、お待たせしました。テツヤと私、今日を以って今までの付合いを解消しました。それで、今日からは違う付合い方でやっていくことにします…」
「…」
私と南部さんは顔を見合わせた
お互い瞬きが止まっていたわ
ケイコのお母さんは…
なんだか頭を横にゆっくり傾けてるしぐさだけど…
とにかくもう少し説明を聞かなくちゃ、わかんないよ
...
約10分かけて、ケイコとテツヤ君から二人の”結論”を聞いた
二人の話し合いの要旨はわかった
でも…
「ケイコ…、あなた、彼女軍団とかって人達にあんな仕打ちされて、憎いとか悔しいとかって気持ちはないの?…」
「最初はありました。確かに、そういうの…。でも、よく考えたら納得いきました。だから、今は”彼女”たち10人に対しては、そういう気持ちはありません」
ケイコはきっぱり言い切ったわ
「…むしろ、すまなかったと。なので、全員には無理ですが、何人かには直接会って話してこようと思ってます。私の無神経な振る舞いは詫びるつもりですし。でも、他の理由で私に腹を立ててた人たちは認めるわけにはいきません。断じて。彼女たちには、”それ”も同時に、しっかりと告げてきます」
この子…、どうやら”今回”の背景を察してるようだ
...
私たち南玉内部が、この件で過剰な反応を起こしかねないことを彼女なりに案じてるわ
ケイコのことだ
きっと自分のせいで、南玉内外で揉め事が起こることを懸念してるんだろう
クソッ、また”奴ら”のことが頭に浮かんでカッカしてきたわ
とにかく、今はケイコとテツヤ君のことだけを考えよう…
...
「そう…。私は、今までの二人のスタンス崩す必要はないと思うけど…。正直言って、このままで貫いて欲しい。でも、あなた達が納得して決めたこと、それは立派よ。なかなか決断できるもんじゃない。私は二人の気持ちを尊重するわ。ケイコ、お母さんにもきちっと伺うのよ」
「はい。…あのう、お母さん、そういうことで決めたんだ。私たち…。了解してもらえるかな…」
ケイコのお母さんはやや怪訝そうな表情だったが、少しして穏やかな顔に変ったわ
そして畳に正座している膝の上の両手を合わせたまま、ケイコに向かって語りかけた
「二人が決めたんなら、それでいいわ。テツヤ君、こんなガンコな子だけど、これからもケイコのことよろしくお願いね。そちらのお母さんにも、しっかりとお話しするのよ」
「はい、おばさん。いろいろ心配してもらってすいませんでした」
「南部さん、あなたはどうですか?」
「ああ、オレも二人の決めたことを尊重する。ケイコちゃん、テツヤの為につらい思いをさせてすまなかったね。ぜひ、コイツの面倒、可能な範囲で構わないから頼むよ、今後とも」
「はい。こちらこそ、ご心配おかけしました」
ケイコがそう言った後、テツヤ君は頭をかいて照れ笑いしてる
そんな彼の姿に気持ちがほぐされたのか、自然にみんなクスクス笑いだしてね…
やっとその場の空気が和んだって感じだわ
...
私は二人の今までを棚上げにするこの決断には、決して納得はしていなかった
ケイコとテツヤ君は別に今のままでいい
周りがどうであれ、強引に突っ張ってもらいたかった
これが、私の偽わざる本心だ
だって、あんなにお互いを理解し合ってるんだよ!
そんなベストカップルが、なんでこんなことで離れなきゃならないのよ!
割り切っちゃえばそれで終わりだよ、”彼女”連中のことなんて
当事者ではない私からは、そう思えてならない
悔しい気持ちもあった
一人の人をいろんな葛藤の下、愛し続けてる自分にとっては、どこか我がことと混同しているようだ
その自覚はあるんだけどね…
何もそこまでバカ正直になることないんじゃなかって‥
損だよ、そんな生き方…
...
南部さんと私はケイコの家を出た後、テツヤ君と別れてファミレスで夕食を一緒にとった
「夏美、いやあ、ありがとう。助かったよ、今回は。今日は俺のおごりだ。好きなもん、腹いっぱい食ってくれ」
「まあ…。じゃあ、お言葉に甘えて、遠慮なく‥」
では、何をいただこうかしら…
メニュ-と睨めっこの私は、空腹を目いっぱい挑発してくる目の前のご馳走さんたちにクギ付けなんだけど…
...
私の頭の半分は”違う”ことでも、目いっぱい占領されていた
とにかく、ケイコとテツヤ君の去就はこれで一段落だ
二人が決めた道だし‥
それに従っていけばいい
このあとは、あの二人に任せればいいんだ、要は…
さあ、そうなれば、次よ!
私たちは、やってやんなきゃいけない
奴らに対しては…!
ううん…、こうとなってはその渦の中にはケイコもいる
本郷麻衣はケイコを”ど真ん中”へと引きずり込んだのよ
そして、ケイコ自身、決してそこから逃げることはないだろう…



