麻衣ロード、そのイカレた軌跡/補完エピソーズ集

その4
ケイコ



まずはテツヤが私のわがままを聞いてくれてホッとした

とてもうれしかった

「申し訳ないな、テツヤ。明日のデート前に…。損だよな、ウチらのこういう生き方って。こんなの、今の時代、ダサいってわかってるんだけど…」

ここでまた涙がこぼれちゃった…


...



「いや…、逆に、こんなんで生涯通せたら素晴らしいよ。まあ、少なくともオレには、絶対無理だけどね。でも、お前、あんまり無理すんな。早死にすんぞ、そんなに自分に厳しいと…」

テツヤは優しかった

冗談っぽく言ってるけど、本気で私を心配してる

私にはしっかり伝わった

コイツ、感性が鋭いや、やっぱり…


...



「アハハハ…。仮に長生きしなくてもさあ…、多美と3人の二十歳の集まりはもう目と鼻の先だし。そこまでは何とかなるべ…」

何言ってんだ、私…

テツヤの言った”早死に”って、そんな短期のことじゃないだろうに

ハハハ…

「お前、つくづく奥の深いヤツだな。ボケもいいところだろ。日本人女性は世界一長寿なんだぞ、ハハハ…。お前みたいな生きのいいのが、早死にってのは60くらいって感覚で言ったんだよ。いくらシュンとしてる場でも、そんなに頑張ってボケなくていいよ、おけい」

「ああ、そうだね。はは…」

二人は和やかに笑っていたが…

お互い、やや顔が引きつっていたような…

なんだろうか、この時の感覚って





「それでさ…、”その他”のこの後のことなんだけど。あのね、その眼鏡かけたちょっと太めの子に、私、会おうと思ってるんだ。私のありのままの気持ちを伝えたいんだよ。教えてくれないかな、名前とか通ってる塾とか」

「おけい…」

「今日ここでテツヤと決めた今後のこととかさ、そのまま言うよ。それに、私の至らなかったところは謝るし、でも、だからと言って中央公園にいた全員に対して屈したんじゃないってことは、はっきりこの口で彼女に話したいんだよ」

「…彼女は亀山さんって子だ。下の名前は知らないんだけどね。それで通ってる塾は…」

彼はここでも反応が早く、知ってることは全部教えたくれた


...



「ありがとう、テツヤ。じゃあ、数日中には会ってくるけどいいね?」

「ああ、よろしく伝えてくれよ。街であったら声かけるからって…」

「了解したよ。それと、黒沼校の二人にも合同部活の時にでも会って話しておきたいんだ。それもいい?」

「それはこっちからも頼みたいくらいだ。悪いね、おけい」

これで、私たちの”今後”は合意に達した


...



たしかに損だよ、私たちの選択

まあいいやで済ませて、自分に都合のいい言い分をポンと受け入れちゃえば、それで終わるんだ

それは、きっと賢い生き方なんだろうね

だから私もテツヤも、そういう生き方に抵抗のない人達からすれば、単なるアホだ

そんなの承知してるよ、私だって