その1
亜咲



「バカヤロー、だからあれほど言っただろーが!!許可の件は大丈夫かと!」

「す…、すいません…」

「全く!…いやあ、高原さん、申し訳ない。やっぱり、こっちの手違いだったようです。許可がもらえてなきゃ、無理なんで‥」

「そうですか…」

今日、ここ逆髪神社で私の石段上りを撮影して、その模様はUHFの地元TV局で放送される予定だったんだけどね…

撮影許可の件で製作会社の人と神社サイド間で行き違いがったらようで、今日は中止になるみたい

「…高原さん、こっちのミスでご迷惑かけてるのに勝手だが、この番組枠は局に買い付け受けてるんですよ。穴は埋めなきゃならないんで、どうすかね…。どこか、似たような別の場所で駆けあがりを撮らしていただくわけにはいかないですか…?」

「他でですか…」

「ええ、要はあなたのバイクテクニックを収録してテレビで流すってのが番組の主旨なので。この神社の紹介だけなら条件付きで撮影はOKってことですから。…せっかく口コミで、ちょうどいい人数の見物人も来てますし。ここでは許可もらえなかったので、代わりの場所で見学してくださいと…。そんな流れで番組の構成に持っていこうと思うんです」

ハハハ…、さすがに番組制作会社のディレクターさんは、転んでもただじゃ起きないか…

まあ、このローカル局は今までも私のモトクロスレースとか撮ってくれてたしね…、私も協力は惜しまないつもりだけど

さあ、そうなると駆け上がる場所だよな…

...


「じゃあ、火の玉川原の石階段がいいかな。土手に下るあそこは、年中上下してるんで…。ただ、ココよりは勾配がだいぶ緩いですけど…」

「川原ですか…」

ディレクターさん、即座に頭の中でイメージ・シュミレーションをしてるようだった(笑)

「ええと…、たしかその火の玉川原もこの逆髪神社とならんで、この地の猛る女伝説の舞台として語り継がれてるとこでしたよね?」

「ええ。大昔から猛る女同士の決闘の地ってことで、この辺に住んでる人たちには周知されてます」

「そうですか、これは使えるな…。よし!高原さん、そこでの駆け上がりでお願いします。できれば日を改めて…。その間に撮影場所の変更経緯をTV局側に承諾してもらいます。ふふ‥、うまく組み立てて話しますから、了解はとれるものとして日程もここで組んじゃいましょう。おい、木村ー、こっち来い!」

はは…、どうやら番組ストーリーはできたみたいね

やっぱり場数を踏んでるプロよね

まあ、私にもどんな流れで撮るか大体は想像つくけど(苦笑)