麻衣ロード、そのイカレた軌跡/補完エピソーズ集

その6
真樹子



「ねえ、今日はテツヤの一番好きな香水なのよ…」

「これ、興奮するんでしょ?言ってたじゃない、理性がぶっ飛ぶ匂いだって…」

「あの時、私を目隠しして燃えくれたよね、すごく…。覚えてるでしょ?」

「コレ、その時のよ。持ってきたの。ここでしてもいいのよ。外だし、最高に刺激的よ、きっと」



...


うーん、今ひとつだな…

大丈夫かよ…

そろそろ7時半になるぞ

アイツ、テツヤをその気にさせられるのか…

心配になってきたわ


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「岩本さん…!時間前ですけど、マトの女、もう来てます」

「そう…」

「どうします?”二人”はこっちの指示を待ってますけど…」

「いちいち、うるさいわね!お前、アレ、見てわかんないのか?まだ温ったまってねえだろーが!」

「ああ、すいません…」

コイツは”彼女軍団”の伝達役その3だ

私が言うのもなんだが、不細工で、軍団の中でもステージが一番下の末席女らしい

で…、使いっぱくらいしか役目がない

なのに、この”コンタクト”に参画した

私、この子”達”の気持ちって結構汲み取れるよ…

「おい、黒沼Bに伝えな!やれって!いいか?”これ”渡して、命がけで行けと言ってこい!お前も死ぬ気で伝えるんだ」

「あ…、わかりました!じゃあ、はい…!」

伝達役その3は、芝生のベンチにすっ飛んで回り込んだ

それから間もなく、期待した”場面”に達したわ

よし、この機を逃すか!


...


「おい、お前、すぐ行け!”二人”に私の”後ろ”つけってゴーサインだ。急げ!」

私は左後ろに待機していた、伝達役その2に命じた

「はい!」

伝達役3より細身のそいつ、目を血走らせて疾走だ


...


ええと、ここで後方にいる久美の様子を確認だな

ふふ…、どうやら、目も頭も全開させてるようだわ

あの子、必死でこの場に立ち会ってるって

さあ、久美、この卑劣な計画のクライマックスよ

しっかり見届けるのよ、目をそらさずにね

でも…、まあ、最初の”随行”にしては良くついてきたわ

いきなりこんなハードバージョンは無理かなと思ったけど…

最初はね


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それにしても、北田久美が”あの”先輩のこと、”周知”だったとはね…

通称、”あの評判の良くない先輩”こと、三田村峰子

怪物・紅丸有紀の一級下で、長く紅丸の対極に身を置き、水面下で顔を利かせてきた、言わば”アンダーボス”よ

しかも、その前には”ダーティー”が付く、悪くて最高に汚い嫌われ者だ

この先輩は、めったに表に出ることはない

まるで夜行性動物のように、人知れず、汚い工作ごとで蠢いている

そして私はこの人を、”師匠”の対象として据えている

正直、色々と”勉強”させてもらったし…

いずれ久美にも、その奥義を感じてもらいたいわ


...


「真樹子先輩、すいませんでした。三田村先輩と”接点”があったことを言わないで」

「いいのよ。”接点”があっても、直接会ってはいなかったんだし。…いい?学ぶのよ。私もそうだったけど、あの人からしか吸収できない、多くの学ぶべきものがあるから。それが”私たち”のような人間には、血となり肉となる」

「はい…」

久美はこっちを向いて真剣に聞いてるわ

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「ところで、久美。先日のヒールズでの集まりではいろいろと驚いたと思うけど、一番ショックを受けたのは何だった?」

「えっ?…あのう、やっぱり亜咲先輩を、その…、麻衣が…。それがとてもショックで…」

久美の話っぷり自体、そのショックの凄まじさが伝わってくるわ

おそらく、”このこと”を知った日から久美自身の中で、”なぜ?どうして?”の自問自答が続いていたことだろう

私は”このこと”については、あえて言葉を添えず、代わり抽象的にだが、久美の心の中を”一突き”することにした


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「麻衣さんが今まで行ってきた過程では、もっと衝撃を受けることがまだあるわ。でも、これからは更に度を増していくはずよ。あなたも、ショッキングな場面を数多く目の当たりにすることになる。覚悟が今いちなら、ここから先は降りた方がいいわ。どう?」

「私は麻衣について行きます。だから、真樹子先輩!私をどんどん”鍛えて”ください。先輩みたいに、何にも動じない強さを私にもお願いします!」

久美の”訴えた”からは、決意のほどが十分すぎるほど伝わったわ


...


「久美、それじゃ、恐ろしく汚い企みの”一部始終”に随行させるわ。早速ね。どんなに残酷な場面に出くわしても、目をそらしちゃダメだからね!」

私が強い口調でそう言い放つと、久美は唾をゴクリと音をたてて飲み込んで大きく頷いていた

その夜、久美の”随行”について、麻衣さんに報告したわ

彼女の条件は一つだった

「久美には筋書きを伏せておいた上で、”一部始終”を見せてやって。その方が衝撃度は大きいから。うふふ…」

彼女は不敵な笑いを浮かべていたわ…