その13
ケイコ



おー、いたいた…

絵美、発見だ!

「絵美ー!おはよう」

「あー、おけい!おはよう。でも…、どうしたの?方向違うのに…」

「えへへ…、朝練兼ねて、今日はチャリ通でさ。っていうか、絵美にちょっと聞きたいことあって。そんで、遠回りしたんだわ」

R子と電話で話したこと…、日曜日だったけど、昨日もいろいろ考えててね…

やっぱり、一応、”確認”することにした

で、週明けの今日、通学前に絵美の家近くまで足を延ばしたって訳でね


...



「ああ…、R子とは駅で会ったわよ、確かに。ええと、4日くらい前だったかな。おけいがケガしたのは知ってたから、心配しててね。ちょうど退院したところだって伝えたのよ。私も薫からそれ、聞いてたから」

絵美はさらりと答えてくれたわ

「…私もそんなに親しくなかったから、ちょっと構えたけど。私とおけい、仲良かったの知ってるんで、自然とあなたの話になって。そしたら、陸上やってる先輩が云々ってね。とにかくさ、高校入ってからのおけい、もう有名人でしょ。結構多いよ、こういうの」

はあ…、中学時代の友人にまで、影響が及んでるってことか

こりゃ、私の想像以上だよ


...


チャリを転がしての二人の会話は続いた

「…でもね、いちいち紹介してくれとかってのを引き受けてたらさ、おけいも迷惑だと思って。だいたいはスルーしてるんだけどね。薫も同じこと言ってたよ。R子には退院のこと、言わない方がよかったかな?ごめんね、おけい」

まったく、絵美と薫はいい友達だわ~

ホント助かるって、この気配り

「あっ、いやいや…。R子は念のための確認だけだから、全然いいのよ。でもさ、絵美はやっぱり親友だよ、薫もさ。何しろ学校戻ったら、みんな勝手に私のことを”別人”に祭り上げてさ。人間不信気味なんだ、ここんとこ。だから本当の友達には感謝してる」

通学途中の慌ただしい時間、チャリをかっ飛ばしながらの会話は”ハアハア”が接続詞代わりだったわ(苦笑)

「おけい、体大事にしてねー!」

絵美は別れる際、いつもの上品な声でエールを送ってくれた

さあ、急がないと遅刻しちゃうわ

”カモシカの足”で、滝が丘高校へと加速だ!