その8
多美代
おけいの顔つきが変わったわ
やはり本郷に対しては、複雑かつ、ただならぬ感情があるんだろう
当然だよな…
「…そりゃあ、矢吹先輩、私にははっきりとは言ってないよ。もちろん。でも一生懸命、信号を送ってくれてるのが伝わってくるんだよ。”お前たちの代が当事者なんだから、しっかりしないとダメなんだぞ”ってね」
私はおけいに南玉入りしてもらって、本郷麻衣とは一緒にぶつかりたいと願ってる
無論、打算もあるさ
でも、何としてもヤツを止めなきゃいけないんだ
実際問題なんだ、それが
私はおけいを”それ”に抱き込むことに躊躇はなかった
だけどよう、矢吹先輩は私やみんなとは違うんだよ、おけい
...
「あの人が、おけいに言いたかったのはさ、もし紅丸先輩が作り上げた土台もひっくり返されるような危機に直面してるとしたら…、力を合わせて守っていこうと…。お前のことを見込んでな。こういうことだったと思うんだ。お前を南玉に入れてどうのこうのってのも、少なくとも他の人のそれじゃない。私はあの人の考え、そう捉えてる」
これは私の推測にすぎないが、ほぼ的を射てると思う
矢吹先輩は、”そういう人”なんだよ
...
そもそも、今の上の人はみんな、都県境のフレームクライシスを察知してる
このおけいだって…
「テツヤは、矢吹先輩のそんな胸中を全部承知してるからさ、さっきもあえて口は挟まなかったんだよ。だからさ、お前が病院から帰って、周りにフラストレーションを感じるのは無理もないけど、テツヤと矢吹先輩は、おけいがさっき言った”苦しみ”を理解してるって」
「うん…」
「ハハハ…、私とは違うんだ、あの二人はさ。ここであえて言うぞ、おけい、一緒にやろう!まあ、ダメもとだけどな。私はこういう気持ちだよ」
おけいは少しの間、厳しい表情だったが、さらに少しして苦笑いしながら私に言ったよ
「多美、あんたはホントの親友だ。これからも、時には取っ組み合いとかあるだろうけどさ、ずっとやりあっていこう。とにかく、今日はゴメン。私、イライラしてたから、多美とテツヤにはつい甘えちゃったんだ」
「いや、こっちこそずっとどころか”一生”付き合いっていきたいよ、お前とは。で、テツヤには、お前から連絡でいいか?」
「うん。今からテツヤの家、行ってくる。謝って、それから”買い物”一緒に付きあってもらうわ。そうとなったら、じゃあ行くよ、私。今夜電話するからさ。悪い、多美…」
は…?
買い物…?
「それからさ、矢吹先輩には、次に共同練習で黒沼行った時、しっかり私の気持ちを伝えるよ」
私はうんと頷いて、他には何も言葉を発しなかった
おけいはカモシカのような長い足で、”彼”の元へと走って行ったわ
多美代
おけいの顔つきが変わったわ
やはり本郷に対しては、複雑かつ、ただならぬ感情があるんだろう
当然だよな…
「…そりゃあ、矢吹先輩、私にははっきりとは言ってないよ。もちろん。でも一生懸命、信号を送ってくれてるのが伝わってくるんだよ。”お前たちの代が当事者なんだから、しっかりしないとダメなんだぞ”ってね」
私はおけいに南玉入りしてもらって、本郷麻衣とは一緒にぶつかりたいと願ってる
無論、打算もあるさ
でも、何としてもヤツを止めなきゃいけないんだ
実際問題なんだ、それが
私はおけいを”それ”に抱き込むことに躊躇はなかった
だけどよう、矢吹先輩は私やみんなとは違うんだよ、おけい
...
「あの人が、おけいに言いたかったのはさ、もし紅丸先輩が作り上げた土台もひっくり返されるような危機に直面してるとしたら…、力を合わせて守っていこうと…。お前のことを見込んでな。こういうことだったと思うんだ。お前を南玉に入れてどうのこうのってのも、少なくとも他の人のそれじゃない。私はあの人の考え、そう捉えてる」
これは私の推測にすぎないが、ほぼ的を射てると思う
矢吹先輩は、”そういう人”なんだよ
...
そもそも、今の上の人はみんな、都県境のフレームクライシスを察知してる
このおけいだって…
「テツヤは、矢吹先輩のそんな胸中を全部承知してるからさ、さっきもあえて口は挟まなかったんだよ。だからさ、お前が病院から帰って、周りにフラストレーションを感じるのは無理もないけど、テツヤと矢吹先輩は、おけいがさっき言った”苦しみ”を理解してるって」
「うん…」
「ハハハ…、私とは違うんだ、あの二人はさ。ここであえて言うぞ、おけい、一緒にやろう!まあ、ダメもとだけどな。私はこういう気持ちだよ」
おけいは少しの間、厳しい表情だったが、さらに少しして苦笑いしながら私に言ったよ
「多美、あんたはホントの親友だ。これからも、時には取っ組み合いとかあるだろうけどさ、ずっとやりあっていこう。とにかく、今日はゴメン。私、イライラしてたから、多美とテツヤにはつい甘えちゃったんだ」
「いや、こっちこそずっとどころか”一生”付き合いっていきたいよ、お前とは。で、テツヤには、お前から連絡でいいか?」
「うん。今からテツヤの家、行ってくる。謝って、それから”買い物”一緒に付きあってもらうわ。そうとなったら、じゃあ行くよ、私。今夜電話するからさ。悪い、多美…」
は…?
買い物…?
「それからさ、矢吹先輩には、次に共同練習で黒沼行った時、しっかり私の気持ちを伝えるよ」
私はうんと頷いて、他には何も言葉を発しなかった
おけいはカモシカのような長い足で、”彼”の元へと走って行ったわ



