麻衣ロード、そのイカレた軌跡/補完エピソーズ集

その7
ケイコ



「おけい、お前の気概はわかったよ。たださ、私が言っても説得力ないかも知れないけど、女の嫉妬は怖いよ。くれぐれも気をつけてくれよな」

男っ気のない多美が、ここまで神経質になってるのには、ちょっと驚いた…


...



私の入院中、多美は矢吹先輩とはいろんな話をしたんだろうな

総集会の件を聞いたが、荒子さんと矢吹先輩は確執を超えた関係に達したようだし

矢吹先輩からしても、荒子シンパの多美は南玉連合を愛する、かわいい後輩ということなんだろう

多美はさらに”解説”を続けてくれた

「それで…、矢吹先輩がさっきみたいな言い方したのはさ、私たちの代を考えてのことなんだよ。あの人は、どうやら本郷の”正体”を見切ってるようでさ…」

”本郷”の名が多美の口から出た直後、私たち二人はほぼ同時に、額の汗をハンカチで拭った

照り付ける初夏の陽射しが強いせいか、”あの”トラブルメーカーの名前で血がたぎったのかは微妙なところだったが…


...


「最も先輩もさ、ヤツの目的とか真の狙いとかまでは掴めてる訳ではないようだけどな…。とにかく、どえらいことを仕掛けてくると…。そんな捉え方してるように見える」

結局のところ、本郷なのか…

正直、本郷麻衣には初対面の時、悪い印象はなかった

家庭の事情で内定していた南玉連合のアタマを辞退し、南玉から去った亜咲さんを、再び”その気”にさせてくれた彼女にはある意味、感謝とリスペクトの気持ちがあった

ところが…

実証はないが、神戸へ転居する直前の亜咲さんを襲った黒幕が、その本郷だったと…

病院でその話を紅子さんたちから聞いた時、血が逆流したよ

もし…、仮にもし、”そうだった”としたら、私は許さない

でもさ…、そんな私の気性を主だった人たちは先刻承知のことだろうな

アメリカに”戻った”紅子さん、相川先輩、それにこの多美とかも…

無論、今さら、あの襲撃の際の真相を解明できはしない

だから、この後の本郷麻衣の”行動”によることになる

多美はそれを察しているからこそ、昨日の総集会の出来事を告げてくれたんだよな