始まりの予感/その12
ケイコ


ここで、もう一方の隣の席に座ってたお姉さんが私に耳打ちしてきた

「飲み物持ってこようか。手伝ってくれる?」

私らは一緒にドリンク運んで、仕切り直しの乾杯となった

水割り一気に飲み干した紅子さんは、再び話しを始めた

「まあ、砂垣の野郎には日本発つ前にしっかり訓読入れとくから。一番いいタイミングみてな。あ、水割りもう一杯くれ!」

”怪物”の機嫌がだいぶ良くなってきたみたいで、みんなホッとした表情だ

「それに、いざとなったらすぐ日本戻ってくるよ。あんたたちの為なら太平洋泳いでも来るぞ!」

この一言をみんな待っていたようだ。急に場の雰囲気明るくなったし

「ケイちゃん、今日聞いた通りだ。部外者で悪いけど、滝が丘の幹部に伝えてくれ。私ら”紅組”は、墨東とは決して与しないとね。おいミキ、まず滝が丘行って、私らの立場はっきり示して来い。あくまで”排赤”に対しては共闘する方針だとな」

ミキさんは「ええ」と言って頷き、隣の私の方を向いた

「ケイちゃん、近いうち相川さんに会いに行くよ。よろしく言っといて」

「わかりました」

どうやら、何かはじまりそうな気配だなあ、動き出したって感じがするよ

私は”部外者”だから直接は関わりないだろうけど、いろいろ聞いちゃったしな

ま、部活の方は新人選抜が近いし、そっちに集中だけど

...

その後、紅子さんとみんなは一人ずつ記念撮影した

私は紅子さんに、”筋肉ムキムキポーズ”とってもらって、右腕にぶら下がったショットを撮った

帰り際、美咲へのプレゼントにと、本場ディズニーランドの帽子を受取った

「ロスに発つ日、来れたら空港来てくれ。美咲ちゃんにもよろしくな」

ホントに外国行っちゃうんだ、この”怪物”

いなくなったら、やっぱり寂しいわ…

私は会場を後にして、道路挟んで埼玉県の、一応”都内”の自宅へと帰路に着いた…