始まりの予感/その1
ケイコ


全く!もっと早く起こせってーの

チャリ飛ばしても電車、間に合うかなってラインだ

というところで、お隣りの玄関が開いたわ

「おはよう。ケイちゃん、慌ててるね。時間ヤバいとかか?」

そうなのよ、いやー、亜咲さんはいつもながら、察しが早い

「電車、間に合いそうにないんだよね。おかん、寝坊しちゃってさ」

「じゃあ、駅まで送るよ。バイト午後からだし」

さすが、頼りになる姉御だ

では遠慮なく…

そこに妹の美咲が、チャリのカギを持って庭に走ってきた

「お姉ちゃん、ハイ、カギ。あっ、亜咲さん、おはよう~」

「おはよう。美咲ちゃん」

亜咲さんはメットを私に渡しながら、笑顔で美咲に話しかけた

「悪いんだけど、ジョンの散歩頼めるかな?ケイちゃん、駅まで乗っけてくから」

お隣のジョンが大好きな美咲だ。断る訳ない

「うん、ジョンの散歩なら任せて!」

亜咲さんは、愛車と愛犬を手際良く道路に”並べた”

”ワン!ワン!”

ジョンも懐いているんだよね、美咲に…

私と亜咲さんはニヤニヤしながらバイクに向かった

「さあ、乗んな!ケイちゃん、飛ばすぞ!」

「おー!」

メットをかぶって、亜咲さんのナナハンにしっかと乗った

「お姉ちゃん、私の手紙、ちゃんと渡してよ!」

美咲のこの言葉が耳に届いたとき、すでにマシンは発進していた

いつもながら早えーわ、マシン”覚ます”の

後ろに乗っかって爆走してから、左手を上げて美咲に合図した