(保健室でキミと)


「あの、吉野くん、恥ずかしいからもう離して」


ここは保健室。


吉野くんを運んでくれた門田くんは教室へ戻っていった。


保健室の先生も出張中みたいだったので私と彼の二人きり。


ベッドに横になっている吉野くんは傍らに座る私の手を離してくれない。


それは、なぜかというと……。


「嫌です、門田のアホに汚されたひよりさんの手を清めないと」


彼いわくそういうことみたい。


「汚されたって……おおげさな」


ははって笑っていたら、手のひらに柔らかな感触がした。


見れば彼が愛しそうに唇を押しあてている。


「ひやっ」


くすぐったいやら恥ずかしいやらで急いで手を引っ込めた。


「もうだめっ」


軽く睨んだつもりだけど、あまり効果がない。


だって頬が緩んでいるのが自分でもわかるから。


彼も嬉しそうににやにやしている。