私を愛おしそうに見つめながら彼は小さく息を吐いてこう言った。


「さっきはごめん」


「うん、もうあんなこと言うのやめてね」


困ったように眉を寄せる彼。


「……」


「吉野くん?」



「それは約束できないな。
ひより先輩の姿を見つけたら、自分の気持ちを止められないから」


真面目な顔でそんなこと言うなんてズルいな。


「なにそれ」


「病気だと思って大目に見てください」


今度は甘えるようにニコッと笑う。


彼の表情がクルクル変わって面白い。


もう、しょうがないなー。


って微笑み返してしまっている自分自身に気づいてハッとする。


私ったら、いつもこんな風に丸め込まれてしまってる。


この後輩男子は私が強く拒めないのをちゃんとわかっているんだ。


その時、強い風がブワッと吹いて私の髪の毛を揺らした。