(屋上でふたりきり)


「風、冷たい」


屋上にいくと冷たい秋風が吹いていたけど、火照った顔にあたると気持ちがよかった。


フェンス越しにグラウンドを見下ろすと準備体操をしている生徒達が小さく見える。


もう授業が始まっているから屋上には誰もいない。


私と彼の2人だけ。


「先輩、寒い?」


「ううん、顔が熱いからちょうどいい」


「でも体が少し冷えちゃうね。そうだ、これ着てください」


そう言って着ていた黒いパーカーを脱いで私の背中に被せてくれた彼。

 
あったかいけど、なんだかドキドキしてしまう。

 
こんなことされたの生まれて初めて。


「あ、ありがとう」


せっかくの親切を断るのも悪いかなと思ってそのぶかぶかのパーカーに袖を通した。

  
私の体のサイズに対して長すぎる袖、スカートを覆うほどの丈。


「わ、先輩かわいすぎ」


彼は楽しそうに笑って私の袖をまくりあげてくれた。


年下だけど面倒見のいいお兄さんみたいなとこもあるんだな。