たとえそれが、どんな結末だったとしても

駅の人混みもようやく落ち着いてきた頃。

私の体調もやっと良くなってきて、立ち上がることができた。


「あの、もう大丈夫です。本当にありがとうございました」


ずっと側にいてくれた男の人に深く頭を下げお礼を言う。

さすがにこれ以上は迷惑をかけたくはなかった。
それに、学校や親に連絡をしなければいけない。

それなのに、彼から返ってきたのは予想外の言葉だった。


「今から海行かない?」

「…え?」


思わず聞き返すと、「行こう」と手を取られる。

新手のナンパ?いや、そんなはずないよね。

再び頭の中が混乱する。

そんな間にも、彼は私を連れて改札を通り抜け、スマートフォンの画面を見ながらどこかを目指し歩き始めていた。


「ちょっと!」


やっとの思いで彼の手を振りほどき、そう叫ぶ。


「助けてくれたのはありがたかったです。でも私、今から学校に行かないと…」


学校、という単語を口にした瞬間心苦しくなって声が勢いをなくした。

そうだ。今から学校に行って、事情を説明して…今度こそ三者面談をすることになるだろう。

再び自分の置かれた状況を思い出し口を噤む。

何してんだろ、私、こんなとこで。

じんわりと涙が溢れそうになった。逃げ出したい。もう何も考えたくない。

自分自身にどんどんと追い詰められているのだ、私は。


「…いいんだよ、行かなくて」


どこにも行かなくていいよ。

そう続けた彼は、酷く切なく微笑んでいた。