たとえそれが、どんな結末だったとしても

「具合、悪いの?」


次の瞬間、誰かに呼びかけられる。
ゆっくりと顔を上げると、ほんの僅か眉を寄せ「大丈夫…じゃないよな」と呟く男の人が視界に入った。

制服を着ているから、同じ高校生なのだろう。


「一旦降りよう」


私の手を引くと彼は、「すみません、通ります」と人々の間を縫って私を電車の中から連れ出した。

気持ち悪さと、頭の骨が軋むような感覚の中で、やっと助かった、という心地がする。

すぐ近くにあったベンチが偶然空いていて、そこに座らせてくれた彼は「これ飲んで」と水のペットボトルを手渡してくれた。


「あの…ありがとうございます」


水分を摂ったことで少しだけ吐き気が収まり、やっとのことでお礼を伝える。

その時、初めて彼の顔をちゃんと見つめた。

癖のない髪に、綺麗な目元。

何故か目が離せなくてじっと見つめていると、「少し落ち着いた?」と優しく訊かれて。

慌てて目を逸らし、小さく頷く。


「しばらくここにいるから、無理しないで」


そう、椅子の側に立っていてくれる彼。

どうしてこんなに親切にしてくれるんだろう。
もしかしたらこの人も学校に遅れてしまうかもしれないのに。

でも、今一人になるのは心細くて、彼の言葉に甘えさせてもらうことにした。