たとえそれが、どんな結末だったとしても

あれからどうやって家に帰ったのか覚えていない。

母は学校に向かったのか既に家にはいなくて。自室に入ってから、ほんの少しの安心感と、酷い恐怖心に包まれる。

きっと今頃、先生は私を探しているだろう。
もうすぐ学校に着くだろう母は、私がいないことを知ったらどうなるだろうか。

考えただけで胃がキリキリと痛み、随分前に買った胃薬を口に放り込む。

あぁ、消えてしまいたい。

ベッドに倒れ込んでから目を瞑り、深いため息をついた。




知らないうちに眠ってしまっていた様で、目が覚めると電子時計は午前五時を示していた。

カーテンの外はまだ薄暗い。ぼんやりと空を眺めていると、はっと昨日のことを思い出した。

そうだ私、逃げて帰ってきたんだった。

起こさなかったということは、母はもう私に愛想を尽かしてしまったのだろうか。

こんな自分が情けなくて嫌になる。
早く学校に行って、自習でもしよう。

重たい身体を動かし適当な教材を鞄に詰め込み、誰も起こさないようそっと家を出る。

自習、というのは建前で、本当は母と顔を合わせるのが怖いだけだった。

臆病な私は、また逃げてしまう。

こういうのが少しずつ積み重なって、自分を苦しめていくのだろう。わかっているのに、抗えなかった。


普段は駅に近付くにつれ段々と人が多くなっていくが、今日は早い時間だからか人が疎らだ。

いつも私の気を重くさせる人混みはないのに、気分が酷く重い。

胃の底に何かあるような気持ち悪さがある。

なんとか電車に乗り椅子に座るけれど、込み上げてくる吐き気と頭が揺れるような目眩が次第に強くなってきて。

高校の最寄りを知らせるアナウンスを聞いても、立ち上がれなかった。

行かなきゃ、と思うのに身体が言うことを聞かない。

そのままどの駅でも降りることができず、終点で電車が停車する。一瞬時計を確認すると、既に普段家を出る時刻になっていた。

もう間に合わない。

まずい、という思いと吐き気で頭が上手く回らなかった。

どうしよう、どうしようと呼吸が浅くなるだけで。

折り返すために止まった車内では慌ただしく人が入れ替わり、私を気にしている人なんて当たり前に誰もいない。

誰か、助けて。

強くそう願うしかなかった。