新そよ風に乗って ② 〜時の扉〜

『明日を生きるために、限られているかもしれない会社の運命にその力を貸してくれ』
あの日、真剣な眼差しでそう言った高橋さんの言葉を噛みしめながら、日々、頑張っているのに、何で不満なんてあるわけないのに。何でだろう? そんな風に見えたのかな? それだったら誤解だから、高橋さんにちゃんと説明しよう。だけど、ちゃんと説明しようと思っても、いざ目の前に高橋さんが居て、あの綺麗な優しくもあり、鋭く光る瞳で見られると何も言えなくなってしまう。今から想像しただけでもドキドキして、ヒューンと胸の中で気持ちがジェットコースターに乗っている気分になっている。
頬に涙の筋がうっすらと出来てしまっていたので、トイレでいつもより入念にメイクを直して事務所に戻ると高橋さんの姿はなく、すでに会議に行った後だった。
『今晩、仕事終わってから、時間あるか?』
時間が経つにつれて、いったい仕事が終わってから何を話すのだろうと疑問に思い、高橋さんが言った言葉の意味が気になって仕方がなかったが、気を取り直して仕事に集中していると、そんな終わった後のご褒美のような感覚もあってか仕事がとても捗り、あっという間に退社時間になっていた。
そして、高橋さんと一緒に地下の駐車場に向かうと、前と同じように助手席のドアを開けてくれた。
「乗って」
「は、はい。ありがとうございます」
数えるほどだが、高橋さんの車の助手席に乗せて貰っているが、どうしてこんなにも自然な動作でジェントルマンな仕草が出来るのだろう。いったい、どこで覚えたのかな?私が乗り終えると、助手席のドアを閉めた高橋さんが、運転席へと向かう姿を見ながらそんなことを考えていた。
「……あるか?」
「えっ?」
何か、話しかけられていたようだったが、聞き逃してしまっていた。
「すみません。その……」
「嫌いな食べ物や、苦手なものはあるか? と聞いたんだが」